セメント系材料のレオロジー
お久しぶりです.月1回くらいは最低でも更新しようかと思い始めた今日このごろでございます.
弊研究グループが所属する専攻では修論発表が終わり,現在は卒論発表の発表練習を連日行っている真っ只中といった状況です.
それは何を意味するかというと実験装置に空きが出てくるわけですね,石田のメインの研究は計算機を使って行うシミュレーションなわけですが久々に実験もしたくなってきました.
現在所属している名古屋大学レオロジー物理工学研究グループはその名の通りレオロジーを主軸とする研究グループなので,レオロジー測定を行う装置「レオメータ」がいくつかあってそれを使って実験ができます.
それを使って何を測るんだい?何を調べたいんだい?ということなんですが,石田は15歳から大学院修士課程までは建築学を専攻していたのでセメント・コンクリートは結構触り慣れているので,そのレオロジーはなんとなくそれをやってみたいなぁとはずっと思っていたわけです.2023年にはセメント系材料のレオロジーのレビューも書かせていただく機会があり,当該研究分野を広く調査する機会がありました.
掲載された日本レオロジー学会誌はオープンアクセスなので誰でも読んでいただけます.(無料でオープンアクセス化できるというのはアウトリーチに非常に適していて有り難い)
「Review of Rheology in Cement-Based Materials and Its Application to 3D Printing Using Concrete」
調べていくとなんとなんと「セメント系材料のレオロジーはレオロジー測定の中でも最難関とされる材料である」という記述が複数出てくるんですね.一人が言っているわけじゃないんですよこれが.複数の先生がそのように考えているようでした.その理由は構成要素が多数(セメント・砂・水・化学混和剤などなど)あるし,反応していって経時変化する,粒子分散状態もきれいな状態にするのはとても難しいなどなどです.
こういう鬱陶しい複雑で変な系というのは石田の好きな対象でして,ややこしいものを交通整理しつつ一生懸命取り組むというところに適正があるんじゃないかと実は思っています.個人的に愛着を感じている素材であることもあり,やってみようとしています(そういえば研究者を志した本当に一番最初は鉄筋コンクリート構造の構造計算研究の研究者になりたいと一瞬思っていたんでした).
まずは他の系で知られているようなレオロジーの典型的な振る舞いをひとつひとつ確認することも仕事になると思います.さらにはコンクリートの3Dプリンティング技術も日進月歩で進んでいるところでして,取り扱うフレッシュコンクリート(流動状態にあるコンクリートのことです)のレオロジー特性によって,3Dプリントで構築できる形態が変わってくるという話もあります.建築を構築するうえで材料が構造を,形態を決めるっていうのはある種の既存の流れに対する反逆で,建築から出てきて材料科学をやっている者として極めてワクワクしますね.
3Dプリントの話で言えば,人類はいつまで地球に住んでられるか,よくわからん時代に入ってきています.地球外で文化的生活を送るために,現在の地球では考えもしないような形態が合理的になるかもしれない.たとえば火星での建築を考えられる端緒になるようなことが,あるかもしれんとか思いながら,趣味的にやってみようかと思っています.
セメントと水を混ぜたものの写真を下に示しておきます.偉そうなことをつらつら書いたけれど,ほとんど泥遊びと変わらんのですわ.